奨学金申請の「保証制度」を徹底解説:連帯保証人と機関保証の違いと選び方
はじめに:奨学金申請における保証制度の重要性
大学や専門学校への進学を検討されている皆さんにとって、奨学金は学費の大きな支えとなる重要な制度です。しかし、奨学金を借りる際には、ただお金を借りるだけでなく、「保証制度」というものが必要になります。これは、もし借りた本人が奨学金を返済できなくなってしまった場合に、代わりに返済する責任を負う人が必要になるという制度です。
奨学金の保証制度には、主に「連帯保証人制度」と「機関保証制度」の2種類があります。この2つの制度は仕組みが大きく異なり、どちらを選ぶかによって、申請手続きや将来の返済に影響が出てくる可能性があります。
この記事では、奨学金申請が初めてで不安を感じている高校生やその保護者の皆様に向けて、連帯保証人制度と機関保証制度それぞれの特徴、メリット・デメリット、そしてご自身の状況に合った選び方を、分かりやすく丁寧に解説します。この解説を読み、保証制度への理解を深めて、安心して奨学金申請を進めていきましょう。
奨学金における「保証」とは?なぜ必要なのでしょうか
奨学金は、未来の皆さんの学びに投資するお金です。しかし、このお金は「貸与型(返済が必要なタイプ)」の場合、卒業後に返済していく義務があります。もし何らかの事情で借りた本人が返済できなくなってしまった場合、貸し手側(例えば日本学生支援機構など)は損失を被ってしまいます。
この「もしもの事態」に備え、借りる本人以外にも、返済に対する責任を負う人を立てるのが「保証制度」です。これにより、貸し手側は安心して奨学金を貸すことができ、借りる側も安定した資金を得られる仕組みになっています。
連帯保証人制度の基礎知識
「連帯保証人」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的にどのような制度なのか、詳しく見ていきましょう。
連帯保証人とは
連帯保証人とは、奨学金の借主(あなたご自身)が返済できなくなった場合に、あなたと同等の責任を負って返済する義務がある人のことです。通常の保証人と異なり、「催告の抗弁権(先に本人に請求してくださいという権利)」や「検索の抗弁権(本人の財産から先に返済させてくださいという権利)」がなく、貸し手側から直接、連帯保証人に返済を求められる可能性があります。
一般的に、奨学金の連帯保証人は以下の2名が必要です。
- 父母(保護者):原則として1名。
- 親族(おじ、おば、兄弟姉妹など):1名。父母とは別世帯であること、安定した収入があることなどが条件となります。
連帯保証人制度のメリット・デメリット
メリット * 保証料の負担がない: 機関保証制度とは異なり、奨学金から差し引かれる保証料が発生しません。将来的に返済する総額が変わらないため、返済負担を抑えられます。 * 奨学金の受給額が減らない: 保証料が引かれない分、満額の奨学金を受け取ることができます。
デメリット * 連帯保証人を探す必要がある: 条件を満たす親族に依頼し、承諾を得る必要があります。親族関係や経済状況によっては、依頼が難しいケースもあります。 * 連帯保証人に経済的負担がかかる可能性: もしあなたが奨学金を返済できなくなった場合、連帯保証人が代わりに返済する義務を負うため、経済的な負担をかけてしまう可能性があります。 * 手続きが煩雑になる場合がある: 連帯保証人の選定、承諾書の記入、印鑑証明書の準備など、手続きに時間と手間がかかることがあります。
機関保証制度の基礎知識
次に、もう一つの保証制度である「機関保証制度」について説明します。
機関保証とは
機関保証制度は、奨学金の返済が滞った場合に、借主に代わって「保証機関(公益財団法人日本国際教育支援協会など)」が貸し手側に返済を行う制度です。この制度を利用する場合、あなたは保証機関に保証料を支払うことになります。保証料は奨学金から差し引かれる形で支払われ、これにより連帯保証人を立てる必要がなくなります。
機関保証制度のメリット・デメリット
メリット * 連帯保証人を探す必要がない: 親族に保証を依頼する手間や、もしもの場合に迷惑をかける心配がありません。 * 手続きが比較的簡潔: 保証機関に保証料を支払うことを選択すれば、保証人を探したり、書類を準備したりする手間が省けます。
デメリット * 保証料の負担がある: 奨学金から毎月保証料が差し引かれるため、実際に受け取れる奨学金の額は連帯保証人制度を利用した場合よりも少なくなります。 * 返済総額が増える: 保証料は「奨学金を借りるための費用」であり、最終的にあなたが返済する総額は、奨学金元金に保証料を上乗せした金額となります。 * 保証料は返ってこない: 奨学金を完済しても、支払った保証料は戻ってきません。
連帯保証と機関保証、どちらを選ぶべきか?
どちらの保証制度を選ぶかは、ご家庭の状況や考え方によって異なります。以下のポイントを参考に、ご自身にとって最適な選択を検討してください。
選択のポイント
-
連帯保証人を立てられるか:
- 条件を満たす親(保護者)と親族に依頼し、承諾を得られるかどうかが最も重要なポイントです。
- 依頼できる親族がいない、あるいは依頼しにくい状況にある場合は、機関保証の利用を検討することになります。
-
保証料の負担について:
- 経済的な負担を少しでも減らしたいと考えるのであれば、保証料がかからない連帯保証人制度が有利です。
- しかし、保証料を支払ってでも保証人を探す手間を省きたい、親族に迷惑をかけたくないという場合は、機関保証制度が適しています。
-
奨学金の受給額:
- 機関保証の場合、奨学金から保証料が差し引かれるため、実際に受け取れる金額は減ります。必要な学費や生活費をまかなえるか、事前に確認することが大切です。
一般的な選択肢
- 連帯保証人を立てられる場合: 親族に保証を依頼することに抵抗がなく、経済的負担を抑えたい場合は、連帯保証人制度を選ぶことが多いです。
- 連帯保証人を立てられない、または依頼したくない場合: 親族に頼むのが難しい、あるいは保証人を探す手間を省きたい場合は、機関保証制度を選択します。
保証制度に関するよくある質問と注意点
Q1. 連帯保証人になってくれる人が見つかりません。どうすれば良いですか?
もし条件を満たす連帯保証人を見つけられない場合は、迷わず機関保証制度の利用を検討してください。多くの奨学金制度では、どちらかの保証制度を選択できるようになっています。無理に連帯保証人を探すよりも、機関保証を利用する方が手続きがスムーズに進むことが多いです。
Q2. 機関保証の保証料は、いくらくらいかかりますか?
保証料は、借りる奨学金の金額、貸与期間、返済期間によって異なります。具体的な金額は、奨学金申請時に提示される計算例や、日本学生支援機構のウェブサイトなどで確認できます。月々の奨学金から一定額が差し引かれる形が一般的です。
Q3. 保証人が途中で死亡したり、行方不明になったりした場合はどうなりますか?
連帯保証人が死亡したり、返済能力がなくなったりした場合は、原則として新たな連帯保証人を立てる必要があります。このような事態が発生した場合は、速やかに奨学金を取り扱っている機関(日本学生支援機構や学校の担当窓口など)に連絡し、指示を仰ぐようにしてください。
まとめ:自分に合った保証制度を選び、安心して申請を
奨学金申請における保証制度は、複雑に感じられるかもしれませんが、その仕組みを理解することは、安心して将来の学費計画を立てる上で非常に重要です。
- 連帯保証人制度は保証料がかかりませんが、条件を満たす保証人を探す必要があります。
- 機関保証制度は保証料がかかりますが、保証人を探す手間が省けます。
ご自身の家庭状況や、保証人になってくれる方の有無、そして保証料の負担をどう考えるかによって、最適な選択肢は異なります。疑問や不安があれば、学校の奨学金担当の先生や日本学生支援機構の窓口に相談するなど、信頼できる情報源に積極的に確認するようにしてください。
この記事が、皆さんが奨学金制度を理解し、不安なく申請を進めるための一助となれば幸いです。計画的に準備を進め、充実した学生生活を送れるよう応援しています。